「アイマス学会のノウハウ」というと機材関連の内容をどうしても浮かべてしまうのですが、どうやらそれ以外の部分に疑問を抱えている方が多いのかなぁ…と感じることが多くなってきました。一度やってみればある程度の要領を掴めるとは思うのですが、機材のように数値化出来ない内容ですし、細かいけれども重要な部分に関連してくる内容でもあり、最適解が断定出来ない点も含めると非常に難しいのも事実ではあります。勿論私も正解が分かっているとは全くもって思っていませんが、私が取ってきた方法をこれから書いていこうと思います。何かしらの参考になれば幸いです。
備忘録の全体的な紹介は此方から
機材関連の備忘録は此方から
資料・素材配布は此方から
事前設計
一番初めに行う、学会をどのような形にしていくのかというお話です。
どんな学会にするのか
まず始めに考えるべきは内容や規模といった、学会の基本的な方向性です。
内容は至ってシンプル。全ジャンルにするのか、ブランドを限定するのか。はたまたアイドルやユニットまで限定して深い話をするのか。若しくは座談会のように参加者同士での会話を重視するのか、逆に兎に角発表数を増やす方向性にするのか。「アイマス学会がしたい」と思った段階で決まっている事も多いと思いますがもう一度確認しておくことをお勧めします。
内容が決まれば規模も見えてきます。これは発表者だけでなく、主催・運営の人数も指しますし、学会の総時間や開始時間も指します。この辺りをどう判断するかは自由ですが、これまでのアイマス学会が参考になるはずです。似たような形式を取っているアイマス学会を確認した上で規模をどのくらいにするかを検討すれば良いと思います。
1つ補足を入れておきましょう。1日辺りの発表者数ですが、15人が限界だと考えています。これ以上は時間的、体力的な壁が高々と立ちはだかってきますのでお勧めしません。
デザインコンセプト
次にお勧めするのがコンセプト。と言っても美的センスを求めるようなワケでは無く、上で述べた「方向性」の派生形みたいなものです。
フォーカスするブランドやアイドルが決まったところに、もう一つだけコンセプトを加えてあげると今後の学会運営が途轍もなくやりやすくなります。「日本庭園」「ゲーム」「お洒落なレストラン」みたいなもので十分です。特定のアイマスやユニットに注目する学会であれば、そのアイドルやユニットのイメージを持ってきても良いでしょう。
このデザインは宣伝・告知時の画像作成やフォント・背景・BGM選択といった、細かいですが大変重要で避けて通れない部分でめちゃくちゃに使えます。今回行ったSTIO2022でも「宇宙」をテーマに様々なコンテンツを設定しています。
日程
学会を企画してから、実際に開催するまでにやるべきことはそこそこあります。発表者を集めるという点でも企画公開から当日までの間にはある程度の余裕を置いておくべきでしょう。これも学会の形式や主催者数によるのですが、企画立案から当日まで大体3ヶ月ぐらいあれば大丈夫だと思っています。内訳としては準備2週間、募集1ヶ月、配信準備1ヶ月、余裕として2週間といった感じでしょうか。一例としては次のようなスケジュールが考えられます(それぞれの仕事内容については後の方に書いてあります)。
準備期間について例を挙げるとSTIO2022では大体4ヵ月用意しましたが、これはProject @rtemisとして学会以外のお仕事を想定していたからでした。またこれも特殊な例ではありますが、5ヵ月から半年もの準備期間を設定したアイマス学会FESTIV@Lは規模や主催者が兎に角多かった為、長めの準備期間を取らないとどうにもならなかったという理由もありました。
同じく日程調整の中で、オンラインだろうがオフラインだろうが「いつやるか」が非常に重要であることは言うまでもありません。例えば公式のライブに当たってしまった日には目も当てられない状態になります。よってアイマス公式サイトがイベント一覧を纏めているのでこれを参考にしつつ、良い感じな日程を上手いこと見極めて設定する必要があります。こればっかりは頑張って見極めて後日イベントが被らないことを祈って下さい。各ブランドの有識者に次のライブがいつ頃になりそうかを聞いてみるのも手だと思います。
仕様書
ここまである程度纏まってきたら、それらを一旦文章にしてしまいます。考えているだけではいつか忘れてしまいますし、何よりグダグダとあと伸ばしにする可能性を減らすことが出来ます(とか言いつつなんやかんやであと伸ばしにはなるのですが)。学会コンセプトや想定人数、日程予定やデザインコンセプトをここで纏めておくと後々準備を進める中で悩んだ時にとても便利です。
またそれぞれ用意する要素について、どのくらいの仕事量と時間をかけるつもりなのかをここで大体考えてみます。こうすることで実はタスクが多すぎた、ですとか地味に余裕があった、というような全体的な目星が付けられます。個人的には「まあそこそこ楽にいけるだろうな」ぐらいの量にしておくとなんやかんやで最終的に良い感じのタスク量になるかなと思っています。
更にこの仕様書は協力者を勧誘する時に使えます。協力者というのは万一企画が失敗した場合、例えその責任が自分一人にあったとしても対外的には協力者にも責任があるように見られてしまうという非常にリスキーな立場であるとも言えます。共同主催をお願いするような場合にはそれ相応の信頼を獲得する必要があるのでしょう。そういった時に仕様書を出して「ここまでキッチリ設計をしている」という安心感を与えることは、特に互いをあまり把握しきれていない方に協力していただく上で重要なことなのかなと思います。
オマケとして、STIO2022にて作成した仕様書を機材関連のデータと一緒に配布します。個人情報保護の観点から一部非公開としている上にかなりザックリ作ったものではありますが大体の雰囲気を掴むのには使えるのではないでしょうか。
仲間づくり
基本的にアイマス学会は一人でしないほうが良いと思います。規模にもよりますが、単純に作業量が多い上にそれを一人でこなさないといけないという孤独感がかなりダメージを与えてくるからです。また、複数人の意見が反映される環境にしておくと思考の偏りをある程度防ぐことが出来ます。こういったことを考えるとやはり学会は複数人でやるのが良さそう。人数については諸説ありますがあまり怖がらず、必要なだけ確保する勢いで良いのかなと。
問題は誰を呼ぶか、です。これはすなわち、学会主催という仕事を細分化して要求される技術を把握し、自らに足りない部分を持っている人を呼ばねばならないということでもあります。大変難しい内容ですね。
唐突ですが、私はアイマス学会をパレードだと捉えています。ブラジルのサンバパレードだったり、徳島の阿波おどり、京都の祇園祭みたいなやつですね。そんなパレードを成り立たせるには以下のような技術が必要でしょう。
・パレードの道を整備する技術
・参加者の衣装を用意する技術
・パレードを広告する技術
・最前列で踊って魅了し、参加したいと思わせられるようなピエロ役
パレードの企画をやったことがあるわけではないので本職の方からすれば的外れな視点かもしれませんが、まあこんな感じなのではないでしょうか。これをアイマス学会に置き換えると
・配信技術
・発表者のフォローをする技術
・効果的な告知をする技術
・参加したいと思わせるような主催の魅力や司会能力
という感じでしょうか。この中で自分に無いものを探してそれを持っていそうな方に協力を持ちかける、というのが基本だと思っています。例えば私の場合、配信技術や発表者フォローはある程度自信があるが告知はそこまで、最後の魅力や司会能力はからっきしという自己評価をしているのでそこを埋められるような方を呼ぶことになります。
また、私の場合出来るだけ思考方向が異なる方を呼ぶことにもしています。もう少し詳しく言うと辿り着く場所は同じでもそこに至るルートが違う方。思考の偏りを防止する観点から見てもその意識は案外間違いでは無いのかもしれません。
問題はどうやってそういった方を見つけるかですが、特にSNSでの繋がりがある場合にはそれを穴が開くほど見ます。特にツイッターは人の色が出やすいので非常に参考になります。どんなことをメインでされているのか、どういったことが得意なのか、時間は大丈夫そうか、みたいなことを兎に角リサーチします。勿論それまでに沢山交流があったり、対面で会ったことがあったり、通話でもディープな話をしたことがある場合はそこまでしませんしする必要も無いと思います。
公開後の動き
開催告知や公開後の動きについてのお話です。なお、使用するSNSはツイッターを想定しますが他のSNSでも似たような展開になるのではないかと思っています。
開催告知
アイマス学会の開催告知は大々的に、目立つように、かつ学会の色が伝わるような形であると良いと考えています。やはり第一印象というのは重要な要素です。
開催告知にあたって用意されがちなものとしては以下のものが挙げられます。
・ツイート文
・一見するだけで内容が把握出来る画像
・ツイプラのURL
・アカウント開設(企画用を作成するのであれば)
・ハッシュタグ(あるのであれば)
・ブログなど、追加の説明文(あるのであれば)
この中で特に画像は効果的だと感じることが多いです。ツイッターのTLを考えた時に画像は強調されがちですし、文字数制限も無く、タイポグラフィーも思うが儘に設定出来て、文章だけでは中々伝わらない学会のデザインを直接ぶつけられる良い機会でもあるからです。中身が文章だけでもいいので画像があると良いと思います。こういった部分に設計段階で決めておいたデザインコンセプトを使えるとスマートですね。
また企画用アカウントを使うかどうかに関わらず、ツイッターアイコンやヘッダーを変更することもTLでの宣伝効果という観点からすると効果的だと思います。また、主催側としても「企画を動かすんだ」というモチベーション兼自制要素となって効果的です。
これは完全なる余談ですが、企画を動かす間のツイート内容やブログには細心の注意を払うようにしています。存在を忘れられないよう定期的にツイートするようにしつつ、ツイートする時には「ツイート文を書く→下書き→一旦閉じる→下書きを見直す→ツイート」という手順を踏むことにしています。これはシャドウバンにならないようにするという理由もありますが、それよりも私が初めてのオフ会である「第2回アイマス学会in Sapporo」に参加するか悩んでいた時に、主催者さんのツイートを数ヶ月分見てどんな方なのかを把握しようとしていたことから来ています。過去の私のように数ヶ月分のツイートを見て参加するかどうかを決めようとしている方がいらっしゃるかもしれない、という感覚は大事にしていきたいと思います。あくまでも私の拘りですが。
ツイートタイミング
開催告知にせよ、他の告知にせよ、出来るだけ目立つ時にした方が良いものであることには変わりありません。出来るだけ多くの人の目に触れるような時間帯を狙ってツイートすることが大事になってきます。
これは諸説ありますが(是非調べてみてください)大体纏めると「8時、12時、18時、22時」辺りの時間にツイッターのログイン率が高いという噂があります。各種コンテンツやゲームの公式アカウントなどを見ると確かにその辺りにツイートしていることが多く、ある程度信頼できる情報なのだと考えられます。例えばアイマス公式アカウントを見ると「12時、15時、17~19時」辺りのツイートが多いようです。
ただ、公式アカウントとタイミングが被ると公式に話題を持っていかれるので完全に被せるのは悪手だと思います。特にガチャ更新告知が行われがちな12時と15時、ライブ告知などが行われがちな18時は公式と競合することになるので避けた方がよさげです。私の場合は22時にツイート、12時15分と18時15分辺りにリツイートという流れを取っています。
タスク管理
アイマス学会や企画に慣れている、自然かつ頻繫にコミュニケーションを取れる関係性である、主導者が1名といった場合には必要ありませんが、そうでない場合には必須となるものです。全体としてやるべきこと(タスク)、それを踏まえて各々に振り分けられるタスク、そしてそのタスクの達成状況を逐一共有しておくことは学会の完成度は勿論、主催や参加者間での信頼関係に繋がります。また、共有しない場合でも自分自身のタスク管理をやる方法をしっかり考えなければいけません。
個人でのタスク管理として私が使い続けているのがホワイトボードです。デジタルデバイスのように電源を入れる必要が無く、紙とは違って何度でも書き直せる点が非常に優秀です。学会を主催するかどうかに関わらず、ホワイトボードはお勧め出来るアイテムといえましょう。
複数人でタスク管理をするのであればまず「定期的な打ち合わせ」が必要です。頻度は学会にもよりますが定期的にボイスチャットというリアルタイムな形でそれぞれのタスクを共有しておくことは主催間の信頼関係に直結します。雑談になって時間を取りすぎないように気を付けつつ、定期的にやっておくことをお勧めします。
主催者が非常に多い、ボイスチャットの時間が安定して取れない、タスクが多過ぎるので逐一進捗を報告しないといけないという場合には専用のホームページを使ってしまいましょう。
例えばこれはアイマス学会FESTIV@Lにて実際に使用したサイトです。使い方の説明は省きますが、タスクとその期限、そして進捗状況を一つずつ設定して記録することが出来るサイトになっています。非常に便利なので、使ってみると良いでしょう。
Discord管理
そんなこんなで発表希望者を募集した後は、発表者さんをDiscordサーバーにお呼びしてその中で各種連絡をしていくことになるかと思います(勿論TeamsとかSkypeとか使ってもいいですが)。Discordは本当に多機能なので上手く使えば物凄く優秀な情報共有先兼会議場所として活用出来ます。
詳しくお話するとDiscord紹介になってしまう上にDiscordはしょっちゅうアップデートで仕様を変えてくるので省きますが、活用すべきはロールと権限です。特に運営陣にある程度の権限を渡しておいて、発表者がアクセス出来ないテキストチャット並びにボイスチャットを作っておくと楽です。
私の場合は
・間違って入ってしまった場合を想定して権限無しで閲覧出来るのはwelcomeのみ、確認の上権限を付与
・会議板には主催以外が書き込めないようにして必要事項を確認する為の場所とする
・学会に関する質問等を受け付けるお問い合わせと主催・発表者の交流に使える雑談板を用意
・ボイスチャットも同様に2つ準備、寝落ちを想定して寝落ち用の部屋も用意
・運営が使う場所は隔離、そもそも発表者からは見えないように設定
という形に落ちついています。
また、「イベント機能」も非常に便利な機能です。
題名や資料、M@STER SONG案など、アイマス学会はどうしても締切を設定して発表者に提出をお願いする、というものが多くなってしまいます。よってこのように提出物名、締切日、提出先のURLを纏めてイベントにしておくと主催側としても発表側としても提出物を把握しやすくなって便利です。
発表者とのコミュニケーション
この項では、「私の場合は」という接頭語が全ての文に付けていると思って読んでください。そのくらい主催による色が出る内容だと思いますし、どの方式が正しいというものでもなさそうな気もします。つまり皆さんのオリジナリティを存分に発揮出来る場所でもあります。
発表者への告知文を書く時や通話での会話をする時、出来るだけ「全体向けでは堅苦しく、個人向けでは柔らかく」するようにしています。ある程度事務的に、しかし親しみやすさも持てるようなバランスを考えるとこうなるのかな、と。そもそも発表者はお客さんではなく、ある意味一緒に学会を作っていく協力者でもあると考えています。親愛度MAXとまではいかずともある程度の信頼関係を構築出来るようにしておきたいものです。
本番までの発表者対応
発表するにあたっての注意事項はある程度ツイプラに記載しておくものだと思います。しかし細かい部分をカバー出来ていない場合がほとんどなので別途発表にあたっての注意事項を説明する機会が必要、それも出来るだけ早めに行うべきだとも思います。それが説明会というわけです。
説明会では、大体次のようなことを説明しています。
・発表時間について
・機材整備のお願い
・題名や発表資料のレギュレーション
・個人情報保護の呼びかけ
・今後の予定
・画面共有の仕方
参考までに此方もSTIO2022にて使用した資料を配布しています。余談ですが元を辿るとOnline SideM学会で私が作成したものにまで遡る、由緒ある(?)ものです。
また今まで参加or主催してきた学会を鑑みると、Discordでの画面共有を体験していただく接続テストを開催するのが恒例となっている印象もあります。これは発表者・配信者共に本番環境を用意した上で画面共有の手順を確認する会です。そして何よりも配信練習や音量調整、資料作成の進捗状況、不明点の確認、発表者とのコミュニケーションと色々なことが一気に出来るイベントです。やっておいて損はないでしょう。
セトリの組み方
とても難しいお題ですが一応項目として立てておきます。発表が複数ある、ということは順番を考えないといけないということでもあります。私の場合、提出いただいた題名や内容、時には発表者さんのツイッターやブログを眺めた上でそれぞれの発表に共通点を感じる並びにすることが多いですね。勿論ブランド別、アイドル別、司会者別や完全ランダムという手もあります。ここも主催者の色が強く出る部分ですので、自分の考えた最強のセトリを組んでみると良いと思います。
当日の動き
色々用意した結果たどり着いた当日のお話。まずは当日まで逃げずに主催として仕事をしてきた自分を目一杯褒めていいのかなと思います。そのくらいの慢心は許されると思う。
肝心の動きですが、流れに身を任せるのが基本だと思います。ここまで来てしまえば、多少主催がやらかしても発表者がとても面白い発表とトークで盛り上げてくれるからです。ですので予定から多少逸脱しようとも、失敗があろうとも、楽しければヨシ!という感じでいいのかなと。
ちょっと真面目な内容をお話すると大体以下の通り。
・最終チェック…機材や発表者の最終確認を行います。ぶっちゃけパソコンは生き物です。昨晩出来たことが出来なくなっている可能性すらあります。リカバリーを事前に考えつつ、当日のコンディションを見ながら準備をします。
・司会進行…最も大事なお仕事。タイムキーパーをしつつ、お話も引き出しつつ、的確にコメントしつつ。とても難しいお仕事です。
・発表者対応…音量の最終確認や配信に入るタイミングの告知等を行います。
・コメント監視…荒らし行為等の可能性は決してゼロではないので、Youtubeのコメントバンは勿論、ツイート取得をしている場合はNGワードの設定を上手く活用する必要があります。
・宣伝…学会中も宣伝は必要です。毎回発表が開始するタイミングでツイートをしている例も見られました。休憩時間にツイートする、ぐらいはしていいのかなと思います。
最後に
以上、非常に言語化しにくい上に正解が分からない内容について書いてきました。この方法が正解だとは思っていませんし、他の学会主催は別の方法を取っているのだろうとも思っています。だからこそ、この辺りをしっかり設定することは学会の色やオリジナリティを決定づける上で非常に大切なのだと思います。また、この辺りは過去のアイマス学会が良いお手本になると思います。自らの思い描くアイマス学会に近いものを探して、徹底的に参考にしてみてください。